さてソフトボールに関する今年の夏の大きな話題の一つが、アメリカのプロリーグに4人の日本人選手が揃って参戦したことでしょう。 ただあまり公な話題にならないので、なんとか自力でNPFの公式サイトを見て勉強しながら成績をまとめているのですが、まだまだ紹介するほどの知識が得られていません。 浅い知識では書く勇気もなかったのですが、これから個人的にも忙しくなりますし、一旦まとめて紹介するのはNPFもシーズン折り返しにかかったこの時期しかないのでは、と…。 じゃあ、今書くの?? いつでしょう!? みたいな感じで。 【NPFとは】 6月初旬から8月後半にかけて、50試合前後のリーグ戦とプレーオフで優勝が争われるアメリカのプロリーグ。 2013年は6月5日から8月18日の約2ヶ月間で、主に北米東部を中心に回り48試合のリーグ戦とその後のプレーオフで優勝が争われる(日付は現地)。 歴史は意外と浅く1997年がスタート。2000年から4年間の休止期間を経てMLBとの提携で2004年に再開された。 当初6チームだったが不況やソフトボールの五輪除外の影響もあり2010年以降は4チームでの開催となっているが、アボットやオスターマンなど世界最強クラスの選手が揃うレベル的に世界最高峰のリーグであることは間違いない。 昨年2012年の世界選手権は日本がアメリカを破って優勝したが、アボット、オスターマンを含めアメリカのトップクラスの選手のほとんどがNPFに参加し世界選手権に出場していなかったという理由が実は一番大きい。【日本人選手と所属チームについて】 今年NPFに日本から4人の選手が参戦し、ついつい「初めての挑戦」と思われがちだが実は過去にも何人かいた。 おそらく最初の日本人選手がアトランタ五輪代表でトヨタ自動車で二塁手だった原田教子さん(この情報は結構あやふやなので話半分で)。その後、太陽誘電から豊田自動織機に移籍し織機を1年で辞めた後にNPF入りした渡辺正子さん、原田さんと同じトヨタ自動車の投手で、NPF入りをめざし渡米し2005年に夢を叶えテキサス・サンダースでデビューを果たした村上真由美さんなどが先駆者として存在する。 ただ先の3人とも日本リーグを引退した後での挑戦であり、現役の日本リーグ選手として夏季にNPFにも参戦するのは今回の4人がもちろん初めてである。 その4人が所属するチームと現時点(7月25日)での成績は以下の通りである。
1位:Chicago Bandits(21勝6敗)~山田恵里(日立)、渡邉華月(トヨタ自動車)
2位:USSSA Pride(20勝8敗)~坂元令奈(トヨタ自動車)
3位:Akron Racers(10勝18敗)~狩野亜由美(豊田自動織機)
4位:NY NJ Comets(5勝24敗)【現在NPFに所属する日本リーグゆかりの選手】 NPFを真面目に見だして驚くのが、特に強豪2チームに多くの日本リーグ経験者がいること。 そこでわかる範囲ではあるが、各チーム現役の日本リーグゆかりの選手を列挙しておく。シカゴ・バンディッツ ~モニカ・アボット(現トヨタ)、クリスティン・バトラー(デンソー)、タミー・ウィリアムス(デンソー)、メーガン・ウィギンズ(現デンソー)
USSSA・プライド ~キャット・オスターマン(織機)、サラ・パウリー(Honda)、ジョーダン・テーラー(現デンソー)、ローラン・ラッピン(Honda)、メーガン・ウィリス(織機)、ナターシャ・ワトリー(現トヨタ)アクロン・レイサーズ ~なし
NY/NJ・コメッツ ~なし【日本人4選手のここまでの歩み~2013年NPFシーズン半ばを終えて~】 NPFも全チームがシーズン半分の24試合を終え各チームすでに後半戦に突入している。 ようやく日本人選手の立場も固まってきたと思われるので、ここで一旦成績をまとめてみようと思う。 シーズンが終了した時点で4選手の1年目の総括を行いたい。<狩野亜由美(Ayumi Karino,アクロン・レイサーズ)>(チーム28試合終了時点)
26試合、52打数、7得点、15安打、2二塁打、1三塁打、0本塁打 4打点、4四球、14三振、0死球、0犠打、0盗塁、0盗塁死,打率0.288 開幕戦は9番ライトで先発出場。初打席で自慢の俊足を生かしA.Williamsonからヒットを放つなど3打数2安打。すると次の試合では1番ライトに昇格するが、その後2試合はM.Dumezich、アボット相手に6打数0安打4三振と結果が出ず再び9番に戻った。以降は「9番ライト」が定位置になっている。 格下チームのNY/NJコメッツに対しては、O.Galatiから3安打、T.Mowattから2安打など結果を出すが、テーラー、パウリー、オスターマンのいるUSSSA、アボットのいるCHICAGOからはなかなかヒットが出ず、第14戦以降の11試合は代走や守備固めなど、先発出場が2回だけと休養を兼ねてか出場機会が少なかった。 慣れないアメリカでの長丁場のシーズンでは、やはり華奢な狩野にはしんどいのかなと思われたが、しかしここからしっかりと巻き返すのが狩野亜由美。 上手く休養を挟んだことで調子が戻ったか、第25戦の強豪CHICAGO相手に初めて「7番ライト」で先発出場すると、アボット相手に3打数1安打。続く試合もA.Williamsonからヒット、1試合休養したあとはM.Dumezichから二塁打と、CHICAGO戦は計3安打の活躍だった。 打順が下位で休みを挟んだこともあり規定打席には達していないが、15安打で打率0.288は21安打で0.288のチームメイトB.Turangと並んで全体13位(チーム3位)に当たる好成績。 下位チームに属し当然のことながらアメリカ、カナダの豪腕投手ばかりと対戦して1年目でこの成績は十分なもの。調子も上向いてきたし、後半戦はもっともっと成績を上げてくるだろう。<山田恵里(Eri Yamada,シカゴ・バンディッツ)>(チーム27試合終了時点)
23試合、65打数、14得点、16安打、2二塁打、1三塁打、4本塁打 15打点、12四球、13三振、0死球、1犠打、2盗塁、0盗塁死,打率0.246 第3戦、狩野のいるアクロン戦が少し遅れたデビュー戦となった。 この試合に5番ライトで先発出場すると4打数無安打ながら犠飛と内野ゴロで2打点を上げ大勝のチームに貢献する上々の滑り出し。 第4戦のアクロン戦はチームは負けたが自身は2安打と気を吐くと、圧巻は5戦以降のNY/NJコメッツ4連戦。A.Bunnerから初本塁打を放つと次の試合でO.Galatiからツーラン。次戦で打順が2番に上がっても好調は変わらず再びO.Galatiから一時は逆転となるスリーラン、さらにA.Bunnerからもホームランとなんと4試合連続で本塁打を放った。 4連発は格下コメッツだったのだが、しかし続く強豪USSSA相手でもオスターマンから2安打するなど4試合で2本の二塁打を含む5安打で打率を0.371まで上げ、「さすが日本が誇る世界の山田恵里!」と、ここまでは素晴らしい活躍だった。ここまでは。 しかしここから何があったのか突如謎の絶不調に陥る。あの山田ですら、初めてのアメリカプロリーグでは精神的にもしんどい部分があったのだろうか。 1試合延期しダブルヘッダーになった14戦、15戦のアクロン戦で6打数ノーヒットに終わって以降、コメッツ戦で2本、アクロン戦で1本の単打を放っただけで27打数3安打と山田とは思えない数字。3割を超えていた打率も一気に0.246まで急降下してしまった。 ただ狩野と同じように、ここ5試合は先発が1試合だけで代走出場が1試合、2試合は出場機会もなしと休養期間を与えてもらった。 あの山田がこのまま終わるわけがないのは確実なので、後半は再び成績を上げ日本から応援するファンの期待に応えてくれるだろう。まずは今日からのコメッツ4連戦に期待したい。<渡邉華月(Kazuki Watanabe,シカゴ・バンディッツ)>(チーム27試合終了時点)
13試合、19打数、4得点、3安打、0二塁打、0三塁打、0本塁打 2打点、5四球、4三振、0死球、0犠打、0盗塁、0盗塁死,打率0.158 山田と同じシカゴ・バンディッツ所属で、もちろんトヨタ自動車でチームメイトのモニカ・アボットとも同じチームである。 初出場は開幕第3戦のアクロン戦でのアボット先発試合で、当然のことながらアボットが完封勝利した試合にフル出場し、自身も初ヒットを放ってデビュー戦を飾った。 第5戦もアボットが先発し7回完封勝利した試合でマスクを被り勝利に貢献したが、実は渡邊にとっての転機となったのが試合に出場しなかった第7戦コメッツ戦である。山田のスリーランでCHICAGOが6回表に逆転し、5-4としたことでリリーフにアボットが登板する。しかしこの時の捕手は先発のクリスティン・バトラーのまま。息が合わなかったのかアボットが6回裏に2安打1四球で3点を失い、まさかの逆転負けを喫してしまった。 この敗戦を機にアボット登板時の捕手は渡邊という「アボット専属捕手」が確立され、その後はアボットが先発した7試合、リリーフした2試合、全てで渡邊がマスクを被っている。 打撃の方では9番打者で代打を出されることも多く、ここまで19打数で3安打と今ひとつだが、専属捕手確立以降はアボットも9戦で8勝0敗と結果を残しており、チームとしても渡邊にはアボットを上手くリードしてくれるだけで十分という評価をしているだろう。 ただ打つ方での渡邊の魅力は5四球でわかるように選球眼の良さと、それに加えて、なんと言ってもあの決勝トーナメントでの優勝決定サヨナラ弾のような「意外性」。いつか試合を決める一発も放ってくれるのではと個人的には期待している。※第28戦のコメッツ戦はアボット先発ながら捕手はJ.Grim。渡邊は?もしかして帰国した??<坂元令奈(Haruna Sakamoto,USSSA・プライド)>(チーム29試合終了時点)
20試合、25打数、6得点、7安打、2二塁打、1三塁打、0本塁打 3打点、2四球、4三振、1死球、1犠打、0盗塁、0盗塁死,打率0.280 初出場は開幕戦。しかも1死満塁と絶好の場面だったが残念ながら投ゴロ併殺に倒れた(リードが大きかったのでこの試合は勝利したが)。 2試合出場無しを挟んで第4戦の2番サードが初の先発出場で、1打席目でヒット放ち3打数1安打とまずまずの成績。しかしその後は同じサードに規定打席にわずかに足りないながらも0.350近い高打率を誇る強打者A.DuranがいることからほぼDuranの後半の守備固め的な出場が長く続く。 第25戦、相手はトヨタ自動車のチームメイトで左のアボットが先発ということで初めて「2番セカンド」で先発出場したが、3打席連続空振り三振。日本リーグでトヨタ自動車と戦う他のチームの選手の気持ちを少しは味わえただろう。とても貴重な経験になったはずだ(笑) その時点で打率も0.217まで下降し、こんな感じで終わるのかと思われたが、第28戦のコメッツ戦、セカンドで途中出場すると回ってきた2打席でL.Richardsonから連続二塁打と存在感を示し打率も0.280まで上げる。 もともと坂元は日本でもそれほど目立った打撃成績を残したことのない選手。それでも日本代表の常連だったのは抜群の勝負強さに加えて「守備の巧さ」。サードのDuran、セカンドのA.Chartersと打撃の良い選手がいるが、坂元はどちらも器用に守れるうえ、トヨタ自動車でも三遊間、二遊間を組むショートのワトリーが守備に難のある選手。ゆえにそういう面でも坂元は頼りにされているはずだ。 これからも先発出場は少ないだろうが、守備固めと試合後半の打席で地味にチームに貢献して行ってくれるのは間違いない。
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